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東方紅魔郷SS 更新9

回想⑧(Stage6)
 咲夜の案内の元案内されたのは意外にもレミリアの執務室ではなかった。階段を上り続け、ついには屋上へと歩を進めた。

「お嬢様、お連れ致しました。」
咲夜は畏まる。レミリアは手で咲夜に退席を要求した。
その瞬間、咲夜の姿は消えさり、静寂が後に残った。レミリアがその均衡を穿つ。
「よい月ね、霊夢。」
「ええ、そうね。雲一つない素敵な…」
 そう。霊夢が見たのは月に何も、紅い霧すらもかかっていない極上の星空であったのだ。レミリアが、ニヤニヤとした笑いを浮かべながら続ける。
「ところで、博麗の巫女さんは、どのような表向きで今日おいでなさったのかしら? まさか、理由もなくこの紅魔館へ喧嘩を売りに来たというわけではないわよね。…、ああ、あの紅い霧?あれならさっき消えちゃったわよ。何だったのかしらねぇ、あれ。」
 
とどのつまり、スカーレット姉妹に遊ばれたのだということを霊夢は理解した。妹の方はまだましであるかもしれない。彼女は本当に霊夢と遊ぼうと思っただけだろう。しかし、姉の方は違う。霊夢で遊ぶためにここまで大がかりな異変を起こしたのだ。
霊夢は基本的には温厚な性格であることは自他共にみとめるところであろう。勿論年頃の少女らしく怒ることもあるけれど、本気で怒りにうち震えると言うことはほとんどなかったのだが。
「…、無題「空を飛ぶ不思議な巫女」」

 霊夢を中心として幾種もの弾幕が出現する。だが、ブレイクの難しい高位のスペルであるにもかかわらずレミリアは易々と切り抜ける。その後も霊夢は用意しておいたスペルを次々と放つが、やはり悠々とかわされてしまった。博麗の巫女、その程度なの?とばかりに悠然と立つレミリア。これも遊びたとばかりに、軽いモーションで通常攻撃を放つ。
 霊夢には世界そのものが紅く染まったかの様に見えたことだろう。宣言から実際にスペルが発動するまでの間がこれまでに戦った敵とは明らかに短かったのだ。宣言とほぼ同時に囲まれていたといっても過言ではない。レミリアの弾幕はフランドールの弾幕と比べると非常にシンプルである。紅い暴力、そのもの。
 霊夢は始めの数波までは運よくよけきったものの、数発の直撃を受け撃墜された。致命傷ではないが、次以降の行動が制限されるには十分なダメージである。
「あら、もう終わり。」
 つまらなそうな声が響く。前評判をもって期待していただけに、そして妹を撃破したという事実を胸に、全力で遊べると思っていたのだが、そうではなかったのだろうか。そもそもレミリアも幻想郷に来て以来咲夜以外の人間を(人間の形として)見たのは2人目のことである。一人目はいうまでもなく霧雨魔理沙。魔理沙本人のいうほど一方的な戦いではなく、特に 恋符「マスタースパーク」の出力はレミリアをもってしても「欲しい」と思わせるようなできであった。最終的に打ち破れたのはスペルカードの枚数が要因となっていたのは否定しがたい事実である。その魔理沙が、「霊夢ならもっと楽しめると思うがな」と言ったのだから。
「もっと楽しませて頂戴。」
 と彼女が言いたくなるのも最もな話である。

 負傷した脚を抑えながら霊夢は立ちがあがる。笑顔だ。
「あいたたた。…よっと。私としたことが…礼を欠いていたわね。まったく、私がスペカルールをミスってどうするのよ…しかも戦う相手に名乗ってすらいないとは…では、あらためて。」
 一呼吸置く。レミリアは動こうとしない。
「突然の来訪失礼。私は博麗霊夢。幻想郷の安寧を司るものなり。昨今、幻想郷を覆う紅い霧が発生するという異変が確認され、原因を調査したところ紅魔館が当主、レミリア・スカーレットがその発端であるということが判明した。現状を鑑みるにその異変は解決したと言わざるを得ない。ただ、元凶を成敗する必要は有ると信じている。」
 レミリアの表情が変わる。
「さっきは先に打たれてしまったから、今度は私から行かせてもらうわ。”ちゃんと避けなさい” 、紅符『スカーレットマイスタ』!!!」
 それまでに放たれた攻撃よりも厚い弾幕の波が霊夢に襲いかかる。しかしそれは霊夢が理想とした「美しき弾幕」そのものの姿であった。

 この時点で、霊夢は先ほどの怒りがなかったかのように冷静になっていた。先ほど被弾した部分をかばいながらの戦いとはなるが、それでも彼女の力はレミリアの放つスペルを回避するのには十分。次々に放たれるスペルを楽しんでいたといっても過言ではない。逆に、レミリアにしてみればその状況が面白いはずもなく、次第に苛立ちを覚えていった。
そして、さも順当であるかのようにレミリアのスペルカードがタネ切れをおこした。

霊夢は、
彼女の勝利を、宣告する。
「紅き吸血鬼、スペルカードが切れたと見える。魅力的な弾幕をもっと見たかったのだけれど、それももう終わりね。敗北を宣言なさい。それをもってこの事件は解決を迎える。」
 
「幻想郷最強は、博麗霊夢、お前なのか。」
 突然レミリアは問いかける。まさか、疑問を投げかけられるとは思っていなかった霊夢は少々驚きつつも、そしてその質問の意図を訝しみつつも、答える。
「おそらく何の制限もかけなかったたら違うでしょうね。いくら博麗の巫女とはいっても『最強』は無理よ。でも…」
「しかし少なくとも、お前はこれまでに異変を起こした全ての存在よりも強かったと。」
「そのとおりよ。」
「私よりも強かったと、」
「私が勝利し、お前が敗北した。」
 一言一言にレミリアの殺気が膨らんでいく。しかし、霊夢は気にも留めない。もしレミリアがどんな弾幕を放とうと、冷静なときの彼女に避けることのできない弾幕は存在しないと、そう信じきっている。そして、霊夢は自分が今非常に冷静であることを自覚していたのだ。そして、可能な限りレミリアのプライドを崩そうとしていた。勿論それは以降異変を起こさせないようにするために、博麗の巫女として当然の措置だ。そういう意味では、霊夢はレミリアの力量を測り損ねていたといわざるを得ない。


「…彬符「悠久なる紅への収束」。」
 レミリアは静かにスペル宣言を行った。怒りに任せた切り札たるスペルは、対人間用の技ではない。相手を確実に殺すことだけを考えた攻撃。刹那もしないうちに、霊夢が弾幕を認識した時点で被弾は決定的なものとなっていた。
弾幕勝負とは思えないほどの爆発音とともに、霊夢の姿がレミリアの視界から消えた。

 
「咲夜…、いつから貴女は私の敵になったのかしら。貴女は、私の僕だと思っていたのだけれど。」
 しばらくして爆発煙が消えた後。レミリアの目には、従者・十六夜咲夜と、博麗の巫女、二人の姿が映っていた。咲夜は被弾の瞬間、時間を止めて霊夢を助けたのだろう。
「恐れながら…、お嬢様。目的をお忘れではありませんでしょうか。」
 珍しくも咲夜が、たしなめる。これ自体が非常に珍しい光景であり、当のレミリアにしても最初意味を解するまでに時間を要した。これまでに『咲夜が自分に意見する』ことはあったが、事実上『咲夜に止められた』という事実は、如何ともしがたく衝撃的であったのだ。
 数秒の静寂の後、ふっ、とレミリアの気配が変化した。
「パチェも同じこと言いそうね…。…わかったわ。咲夜、貴女の諫言受け入れましょう。」
 レミリアは咲夜に抱きかかえられている霊夢に向かう。
「博例の巫女、霊夢。明らかに貴女を殺すのは簡単でしょうけれど、ルールに従って異変を起こした以上、負けを認めましょう。…これでよろしくて?」
 レミリアは頭を下げなかった。
霊夢は、咲夜から離れ、苦々しげな表情で対峙する。
「結構。不愉快な結末であるけれど、犯人が負けを認めてしまった以上解決を宣言せざるを得ない。個人的には……非常に不愉快だけれども。」
 こうして、若干一名の煮え切らなさを残しつつも紅魔事変は解決を迎えた。


回想⑨
そして数日後の博麗神社。魔理沙と霊夢は、今回の事件を肴に飲み明かしていた。
「結局なんだったのかしら、今回の事件は。」
 結末が、満足のいく形ではなかったこともあって霊夢はここ数日テンションの低さが目立っている。
「さてな。…まぁなんだ、お前の書いていたみたいに”遊びで異変を起こした”ってことで納得すればいいじゃないか。」
 霊夢もそういう意味では理解している。納得はできているのだが、いたるところが気に入らないのだった。わざわざ霊夢を敵に回したのに紅魔館の戦力が総がかりでなかったこと、咲夜に撃墜されたにもかかわらずコンティニューが認められていたこと、いやにあっさりとレミリアが引いたこと…数え上げたらきりがなかった。
「なんか、こう…目的をぼやかそうとしている感じがするのよ。だから事件の全容がはっきりしない…。そういえばこの間、事件起こした理由を知ってるって言ってなかった?」
 このコメントに、魔理沙はあえてとぼける。
「確かに言ったよ。結局レミリアに直接聞かなかったんだな。ならヒントだ。…今回の事件、私が残っていたこと自体が異様なんだ。」
「どういうこと?」
 霊夢には新事実だ。
「いやな、あの時図書館ではあんな風に言ったけど、実際は咲夜に残るように頼まれたんだよ。近々霊夢が来るだろうからそれまでは残ってくれってな。」
 つまりは魔理沙は役者として必要だったということで、
「あの事件で私がしたことといえば、霊夢を図書館に案内したくらいだろ。あれって何か意味があるのか?」
「…もう一つあったわ。フランドールを抑える役。」
 あえて外していたがしっかりとデバッグされてしまった。さすがは霊夢、大切なところは外さない。
魔理沙は思い返す。もともと、最初に紅魔館に侵入した時なぜか懐かれてしまっただけだ。まぁ魔理沙が勝ってしまったのが良くなかったのだろう。
「そもそも、『あの時点で』やめておけばよかったんだよ。レミリアのやつ、「もう一人位いいじゃない。」だなんて。」
 独り言のような呟きをもって霊夢は、レミリアの目的を理解した。
「なるほど、フランドールが主役だったのね。」
「…さすが霊夢。まぁ…気づくか。」
 せっかくなら確りと解決したいという霊夢の意見を尊重し、二人は紅魔館へと向かった。ちょうど夜だ。話も聞けるだろう。


「ようこそおいでくださいました。…おいでになるかどうかは微妙だったのですけれど…」
 咲夜は、紅魔館の玄関で二人を出迎えた。魔理沙は少しバツが悪そうにしている。
「すまないな、咲夜。言う気はなかったんだが、霊夢の不機嫌が直らなくてな…。」
 構いません、といって二人をリビングへと案内する。リビングには、レミリア、フランドールの両名が待っていた。
「こんばんは、霊夢。」
 レミリアの慇懃な笑顔は変わりない。今日霊夢たちが来ることを知っていたようだ。実際に知っていたのかもしれない。
「どうしてきたのか知っているのでしょう?」
「勿論よ。貴女と私はすれ違う運命。これは如何ともしがたい事実。変えてしまってもいいのでしょうけれど…でも貴方とはきっとこのままの方がいいわ。」
 霊夢には何の話であるかがわからない。疑問よりも苛立ちが勝る。このあたりは霊夢らしいというほかない。
「貴女の後ろにいる娘。まさかあんたみたいな存在がいるとは思わなかったわ。…貴方が創ろうとしたのは、妹の友人かしら、それとも…贄?」
 ストレートな疑問。これこそが紅魔事変の解答として霊夢がたどり着いたところであった。レミリアは、はぐらかそうとも考えたが、それでは事件を起こしたことが無為にしまってしまう。結局、素直に答えることにした。
「友人よ。正確には…きっかけね。本当に思ったとおりに動いてくれた…霊夢、魔理沙礼を言うわ。貴女達のおかげでこの子と和解ができた。感謝してもし足りない。」
 フランドールは、何も言わない。咲夜も、何も言わなかった。


霊夢は、きびすを返しドアへと向かった。
「魔理沙、帰るわよ。」
 どうしたものかと魔理沙は珍しく迷う。しかし、結局的にこれはレミリアと霊夢の問題だと判断した。すまなかったな、とレミリア、咲夜に声をかけ、霊夢に追随した。

 
「レミリア。貴女の願い聞き届けてやってもいい。フランドールが寂しそうになったら咲夜にでも連絡させなさい。妹を想う心、私も嫌いではない。しかし、幻想郷の管理者、博麗の巫女としては、お前のことが大嫌いだ。」
 霊夢はポツリと言葉を漏らし、去っていった。対照的に、魔理沙は、レミリア,フランドールの方を一度向き、再び別れを告げた。
「私は、お前みたいなの好きだぜ。フラン、また遊びに来るからな。レミリア、霊夢は…あんなこといってるけどお前のこと、嫌ってはいないな。巫女らしくしただけだ…、勘違いしないでやってくれ。」
「勿論よ。」
 ドアの閉まる音が紅魔館に鳴り響く。


こうして、幻想郷全体を巻き込んだ後に紅魔事変と呼ばれる事件は終結したのだった。

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東方紅魔郷SS 更新8

回想⑦(StageEX)
 幾許か後、霊夢は意識を取り戻した。あたりを見回したが闇があるばかりで何があるかも、ここがどこであるかもわからない。
「いたたた…。ったくもう、どうなってるのよ…」
 悪態をつくが何も返事は返ってこない。ズキズキ痛む後頭部を抑えながら、手探りで埃にまみれた通路を進んでいくと、遠くから微かな歌声が響いてきた。
「…聞いたことある曲ね…何だったかしら。昔、魔理沙が歌っていたような気がするけれど…。」
 歌声の主を頼りに進んでいくと、大きなホールへとたどり着いた。相変わらず明りはなく、月光が唯一の光源となっていた。ホール奥の祭壇に座る少女の影。
 霊夢の登場に気づくと声の主は歌をやめ、視線を現れた少女へと定める。
「貴方が、お姉様の言っていた人ね。霊夢…だったかしら。」
幼さの残る、というより幼い少女の声。しかし、こんなところにいるからにはただの人間ということもあるまい。
「その通りよ。私は、博麗霊夢。こんばんは、で、あっているのかしら。…どうも気絶していたようだから時間がよくわからないのよね。今何時なの?というよりここはどこなのよ。」
「私が起きているから、きっと夜よ、今は。」
 その言葉によって霊夢は目の前にいる少女が何であるのかを理解するにいたった。
「貴方が、紅魔館のご主人というわけ?」
 そんな確信とは異なり、少女は頭を振った。館の主人以外に吸血鬼がいるという話は聞いたことがない。場所は未だに不明だが、先の魔女の視線を考えると図書館の奥なのだろうか。紅魔館の中なら問題ない。さて…
「さっき、お姉様といっていたようだけど。それじゃ、貴女は屋敷の主人の妹さんなの?」
 祭壇に座っていた少女は、スタッと立ち上がりお辞儀をした。動きはたどたどしいが、その雰囲気は良家のそれ、である。
「私はスカーレット家次女のフランドール。フランドール・スカーレットよ。貴方のことは、お姉さまからは壊れにくいから全力で遊んでもいいっていわれているけれども、それで大丈夫なのよね。」
 興味深々に霊夢を観察するその視線が霊夢には不快だったようで、挨拶代わりにフランへと弾を撃ち込んだ。フランは片手でそれを受け止める。ダメージを負った様子は一切ない。
「ふーん、それが今日の遊び方?なんていうの?もしかしてそれがお姉さまの言っていた遊び方なの?」
 相変わらず質問を繰り返すが、霊夢は答えない。
 よーし、試してみようっとという気軽そうな声とともに、霊夢の周囲に弾幕が表れる。

禁忌「クランベリートラップ」

なんとなく出したという感じの弾幕で、弾の速度はそんなに速くはないがそれでも全方位より表れる弾幕はフランドールの力の現れであろう。
「博麗さん、これでいいのかしら?」
 と、無邪気に話しかけている。はじめこそ霊夢は必死によけていたが、その弾幕パターンにようやく慣れてきたのか、「そうそう。そんな感じ」という余裕が生まれ始めていた。
「あれれ?お姉さん、飽きてきちゃった?次の遊びする?」

(結局この娘は遊びたいだけなのね…さて、どうしたものか)
このときも霊夢は迷っていた。


―――紅魔館地上階にて

咲夜とレミリアは地下から響いてくる爆音を聞いていた。レミリアは落ち着いているが、落ち着かないメイドである。
「お嬢様、よろしかったのですか。妹様は力はあるとはいえ、その力を制御できません。ですから…」
「いいのよ。あの子が遊びたいって言ったんですもの。遊び相手を連れてくるもの、わがままを、…たまには…叶えてやるのも姉の役目よ。」
 そういわれてしまっては、咲夜の返答はひとつしかない。
「御意のままに。」
で、ある。


―――紅魔館某所 

霊夢は焦っていた。相手は遊んでいるつもりのようであったが、その魔力は膨大であり、一つ一つのスペルカードをよけきるのが精一杯。反撃の余地などない状態であったのだ。そうなるど、相手を満足させるしか選択肢はない。はてさて、いつスペカは尽きるのか。

「悪魔の妹よ、お前は私と遊びたいと言ったが、どんな遊びを用意したのよ。」
「うーんとね、全部で10種類かな。貴女はあんまり用意していないの?」
霊夢は、曖昧に返事をしながら考える。勿論霊夢もスペル発動の準備はしているが、どうにもスペル宣言のタイミングがつかめない。そしてまた一つスペルブレイクを迎えた。
「今のはね、「カゴメカゴメ」っていうの。外の世界の人たちが歌ってる歌なんだってパチュリーが言っていたわ。」
外の世界。もちろん存在自体は霊夢は十分に知っている。とはいっても博麗大結界の外側の世界がどうなっているかは博麗の巫女とはいえ、知識以上の事を知りえなかった。
「へぇ、こんな所にまでに『外の世界』の知識が流れているとはね、驚きだわ。貴女は外の世界を見たことがあるの?」
「ううん。私はずっとこの屋敷の中。お姉さまと、パチュリーと、咲夜にしか会わない世界。…、でもね。最近”トモダチ”っていうのができたの。魔理沙っていうんだけどね。すっごく強いんだよ。」
同時にフランドールの周囲に無数の弾幕が出現する。複雑な文様を描きながら霊夢に迫ってきた。
「禁忌「恋の迷路」 、私は魔理沙みたいなまっすぐな気持ちは持っていないけど。そんなものはとうに失くしてしまったけど、きっと焦がれる気持ちってこういうものじゃない?」
 フランドールの放つ『恋』は、それまでのスペルと違って非常に緻密であった。ただ、魔理沙の真似をしているだけでないことは十分に分かる。なぜ、こんな気持ちを持っているのだろう。その心理を悟ったのか、フランドールは続ける。
「当然よ。お姉さまに400年近くも会えなかったのだから。…、そうよ。魔理沙がお姉様を連れてきてくれたの。会いたい、会いたい。会いたい、会いたい。その気持ちは、よく知ってる。心が壊れてしまうくらいにね。きゃは、次の遊び、行くよっ」

 そのスペルカードを境に、フランドールの放つスペルは複雑なものへと変化していった。併せて、少しずつ会話が通じなくなったのだった。その現象が最高潮に達したのは9枚目のスペルカードでのことだった。
 フロアを甲高い笑い声が占めた。一つや二つではない。無数の甲高いだけの不快な笑いが響き渡ったのだ。霊夢が意識を集中すると、いくつかの意識を読み取ることができた。(試しに、「あんたはどうしたいのよ」と叫んでみたが無駄であった。)

「もっと遊ぼうよ。」「でも、遊び終わったらお姉さんここから帰っちゃうんじゃないの。」「だったら、ここから出さなきゃいいんだよ。」「そうね、閉じ込めちゃえばいいんだ」「きゃはははは、とじこめる。」「ずっとずーっとおりのなか。」「そうすれば、ずっと遊べるね。きゃは…」
 それ以降は、笑い声だけになってしまった。つまるところ、「一人は寂しい」が暴走しているだけだろう。さっき見た「恋の迷路」よりよっぽどたちが悪い。霊夢は、迫りくる弾幕の数々を用意したスペルで片っ端から消し去る。
あたかも、その誘いを拒絶するように
まるで、その願いを打ち砕くように
さも、フランドールが退屈だというように
ただ、拒み続けた。

そしてそれは、フランドールには存在の否定のように映った。

唐突に笑い声がやむ。空間を完全に埋め尽くそうとしていた弾幕は消滅し、姿をくらましていたフランドールが現れた。その顔には表情がない。
「…、そっか。お姉さんでもだめなんだ。私とは遊んでくれないのね。キライ、嫌い、大っキライ」

QED「495年の波紋」

空間が震え、至る所から弾幕が生じる。波のように伝わる弾幕は幾重にも重なり、霊夢のいる場所では回避不能な状態となっていた。しかし、そこは博麗の巫女である。見事なまでの動きでスレスレに弾幕をよける。彼女は理解していた。
「このスペル、フランドールに気持ち ( 言葉 ) が”辿り着けば”勝ち、ね。」
いかな霊夢とて、完璧によけきれるわけではないクラスの弾幕。それでもフランドールを目指す。
しかし、どうして霊夢はフランドールを助けようと思ったのだろうか。彼女には、このまま放っておけばフランドールは発狂し、最後には意識を失うという確信があったが、それでもフランドールに声をかけることを選択したのだ。
果たして、霊夢は優しいのであろうか。本人はおそらく否定するだろう。「私が、優しい?そんなわけないじゃない。」と。

「ったくもう、痛いじゃない。」
フランドールの目の前まで、霊夢が言う。
「わがままな娘だと魔理沙に嫌われるわよ。ほら、いい子だから…」


「そんなことで嫌う私じゃないぜ。」
魔理沙は、唐突に表れる。それはいつもの事であったし、それにツッコミを入れるのは霊夢の仕事であると彼女は信じていた。だから、霊夢が喋るより先に、フランドールが魔理沙に飛びついていたことは少なからず衝撃的であった。
「まりさだーーー♪」
その魔理沙の隣には、霊夢の知った顔があった。紅魔館のメイド長、十六夜咲夜である。
「博麗霊夢様、先ほどは大変失礼いたしました。お嬢様がお会いになるそうです。」

「お姉様が博麗の巫女さんに会うの?霊夢、死んじゃうの?きっと、死んじゃうよ。」
魔理沙にじゃれつきながらも、フランが心配(?) する。だが霊夢にとってはそれこそが、今回の目的であった。
「フランドール。私は大丈夫よ。…、魔理沙、フランドールの事は任せたわ。」
言われなくとも、といった表情で魔理沙がうなずく。

「メイド長、案内なさい。」


幕間⑦
 
「そういえば、この時点で貴方は『どうして妹の部屋で起きたのか』というより、『どうして貴方は気絶したのか』ということが分かっていたの?」
 レミリアが霊夢に問いかける。
「おぼろげながらには推測はしていた。勿論時間を止めるなんてことが可能な人間がいるとも思えなかったし、油断をした瞬間に不意打ちを食らったと考える方がよっぽど自然だったから、信じてはいなかったけどね。そういえば、結局はじめの戦闘の時にどうして月時計を使って時間を止めなかったのよ。一撃目に使われては、いかな私とて撃墜されていただろうに。」
 咲夜は、それに応えようとしたがレミリアはそれを手で制する。話されたくないようだ。霊夢にしても、ふとした疑問なだけであったようでそれ以上突っ込むことはしなかった。妹想いであることをいかにどれだけ知られていようとも外部にはひた隠しにしようとするレミリアである。

東方紅魔郷SS 更新7

回想⑥(Stage5)
 咲夜の登場にいささか戸惑った霊夢であったが、その隙に咲夜は話を始めた。
「貴方が博麗の巫女ですか。…さて、お嬢様から貴方はお帰りであるという風に伺いましたので、お見送りのため参上いたしました。玄関までの道順はお分かりでしょうか。」
「…ご丁寧にどうもありがとう。でも貴方のご主人様は何か勘違いをしているようね。私はまだこの館での用件は終えてないわ。そうね、せっかくだから、貴方に聞いてみましょうか。このごろ幻想郷に紅い霧が発生しているのだけれども、……もちろんご存知よね。その原因を聞いたことはない?」
霊夢は当然の質問を口にしたが、しかし咲夜は首を傾げるばかりで答えようとはしなかった。嘘は『言わない』よう命じられているのだろう。
霊夢は、パチュリーに紅茶の礼を述べ、更に魔理沙に出かける旨を伝え、図書館を出ようとする。
「霊夢様、勝手は困ります。」
もちろん、咲夜は黙っていようはずもなく立ちふさがった。既に手にはスペルカードを用意しているようだ。一言もなく、なんの合図もなく戦闘は開始される。その構図は非常にわかりやすい。主の命を遂行する咲夜と、己が使命を遂行する霊夢、である。
戦闘自体は非常に単純なものであった。お互いが決定打を出すこともなく、ただただカードを消費するだけの消耗戦となっていた。この間ずっと霊夢の気にかかっていたのは魔理沙の言っていた咲夜の特殊能力のこと。今のところそれを使っている気配はない。
「ねえ、咲夜。魔理沙から聞いてるわ。なにか手品が使えるんでしょう。せっかくだから見せてほしいわ。」
 しかし、咲夜は挑発に乗らず「はて?なんのことでしょう。」ととぼけている。
そしてそれは霊夢の放った弾が咲夜に直撃する直前であった。明らかに回避不可能であり、「よし、おとした」と霊夢が直感した瞬間、「くるはずもない方向から来た弾幕」によって、ゴンッという鈍い音とともに霊夢の意識はブラックアウトした。

東方紅魔郷SS 更新6

回想⑤(Stage4)
 紅魔館の中に入った霊夢は迷っていた。いや、気持ちがではない。道に迷っていたのだ。
「格好つけて中に入ったのはいいけど…。だだっ広い屋敷ね。中の構造がどうなっているか全くわからないわ。」
差しあたって近場のドアから順番に中を確認していた。しかし、霊夢は基本的に気が短い。いらだった彼女はいつの間にか、ドアを破壊しながらその作業を進めていた。
 そんなことをしばらくしていたのだが、めぼしいものは見つからない。「どうなってるのよ!」と叫びかかったところに、聞きなれた声がかけられた。
「おや、霊夢じゃないか。お前の趣味はドアを壊して回ることだったのか?」
ここで魔理沙に会うとは思っていなかった霊夢は一瞬停止してしまった。しかし、すぐに状況を把握したのか、
「……。魔理沙!!! どうしてこんな処にいるのよ。というか連絡もなしに何をしていたのよ!!!」
 と一言。だが魔理沙は霊夢の怒りもどこ吹く風、
「わるいわるい。楽しい部屋を見つけてな。どうだ、せっかくだから霊夢も見てみないか。」
 言うなり魔理沙は地下へと向かっていった。「全く、相変わらず人のことなんてお構いなしなんだから……」と言いながらも、霊夢は魔理沙の後を追う。かなりの距離を歩いた後、二人は地下の図書館へとたどり着いた。
紅魔館地下にある魔法図書館。毎日のように膨大な書物が収められていくこの図書館は一人の管理者と一人の司書がいるだけだ。魔理沙と霊夢の二人が入った時には管理者たるパチュリー・ノーレッジが読書を続けていた。
「パチュリー、お客を連れてきたぜ。」
 パチュリーはその声を合図に、わずかに本から目線を上げ、霊夢のほうを一瞥した後に魔理沙へと目を向ける。
「相変わらず唐突ね。しかも目下のところ、紅魔館の敵を連れてくるだなんて……。」
「おおそうか、霊夢は敵だったのか。そりゃぁ悪いことをしたなぁ。」と魔理沙。悪かったというそぶりは全く見せない。
「別にいいわよ。私の敵じゃないし。」
目線だけで霊夢を向く。
「博麗の巫女さん。私の自慢の図書館へようこそ。私はパチュリー・ノーレッジ、魔女よ。」
あいさつとも自己紹介ともとれる一言を終えると、これで十分とばかりに本へと視線を戻した。霊夢にしたところでこの魔女に用件があるというわけでもない。仕方がないので、「まぁこんなやつなんだよ」と言わんばかりに肩をすくめる魔理沙へと質問をすることにした。
「さて、今度こそ話してもらうわ。この一週間何をしていたのかしら?貴方が連絡をしてこないものだから結局私が出張る羽目になったじゃない。」
 霊夢は少し怒り気味なようで、少し嫌味が混ざっていた。
「いや、お前に連絡してもよかったんだな。まぁ、ここに来てからの話くらいはしておくか。あの時神社を出発してからしばらくの間は町でこの館の情報について聞いて回っていたんだ。で、やはり紅魔館が元凶だという結論に至ってな。湖にいたよくわからん奴を倒したりして、紅魔館へと着いたわけだ。そしたらレミリアのやつが遊びたいっていうからちょいと遊んだりしてだな。いやまぁぼこぼこにされただけなんだが。で、今回事件を起こした理由を聞いてだな、私は納得した。」
 「それで?」と、霊夢。まだ話は続くようだ。
「そんなわけで暇になったから屋敷の中をぶらぶらしてたらこの図書館を見つけたんだ。すごいぜ、この図書館。今まで資料不足で進まなかった研究がびっくりする位進むんだよ。研究者にとっては天国みたいな環境だな。まぁ、霊夢は研究なんてしないから分かんないだろうけど。うーん?レミリアがどうして事件を起こしたのか話せって顔をしているなぁ。……残念ながら私からは話せない。一応これでも筋は通すたちだからな。聞きたいんだったらレミリアの奴に直接聞いてくれ。」
 言い訳のように、弾幕のように全開で話をする魔理沙とは対照的に霊夢は落ち着いて答える。
「私に連絡をよこさなかった理由は。」
「ただ単純に興味だよ。お前とレミリアとのスペルカード勝負を見てみたかっただけだ。私は、まぁボコボコにされてあまりスペルカードを見ることができなかったからな。」
 やはり心配なんてするべきじゃなかった、と後悔する霊夢であった。
「はぁ……。そんなところだろうとは思ったけどね。魔理沙がそうそうの妖怪に負けるとは思えないし。あらっ、ぼっこぼっこにやられたんでしたっけ?ふふふ。でも、それならどうして図書館の外で出会ったのかしら。この魔女と一緒に図書館の虫をやっていたのではないの?」
「ああ、確かにさっきまで図書館にこもっていたんだけどな。なんかレミリアと咲夜……、ああ、お前は知らないのか。咲夜ってのはメイド長をしてるやつだ。ちなみに人間な。……、その二人がやってきたんだよ。それで追い出された。ちなみにこの前、咲夜とも一度戦ったんだが、なかなかたちの悪いやつだぞ、あいつ。どうせお前も戦うことになるんだから、気をつけた方がいい。なぁパチュリー、あの二人は何しに来たんだ。」
「レミィが読みたい本があるとか言っていたような気がするわ。咲夜はその付き添い。」
 パチュリーは意識して目線を本からそらさずに答える。霊夢はそれに気づいたが、気にしていることをパチュリーに悟られるのはよくないと感じ、話題を戻すこととした。
「その咲夜ってやつの何がたちが悪いのかは…、貴方の事だから言わないんでしょうね。」
「フェアじゃないからな。」
 魔理沙は当然、と答える。このまま魔理沙と霊夢の会話が続くものだと二人とも思っていたのだが、意外にもパチュリーから話をかけてきた。しかも読んでいる途中の本を置いて、である。
「一戦、お手合わせ願えないかしら。」
 パチュリーは図書館の奥から小悪魔を呼び寄せ紅茶を入れさせ、一息ついてから霊夢へ対戦を申し込んだ。
「貴女がこの異変を解決しようとしていることは私にとっては関係のないこと。でも、魔理沙の話を聞いていて貴方に興味を持ったの。資料にも、博麗の巫女は強大な力をもっていると記してある。これまでに幾度か異変らしきものを解決したということも聞き及んでいる。しかし、貴女が人間であるというならば限界が必ずあるはずよ。そして、人間の限界は私たち魔女に比べて小さなものであると、この図書館に収められている膨大な知識は告げている。おそらくは貴女はレミィに届かない。まったく届かないでしょう。最後まで遊ぶことができないなら遊ばないと同じ事。だから私が壊してもいいかなって思うのよ。どう転んだところでどちらかに壊されてしまうんだから。」
 霊夢は黙ったまま応えない。代わりに魔理沙が一口付けることとした。
「弾幕で遊ぼうだなんてお前さんらしくないじゃないか。なんだかんだと御託を述べているが、目的は何なんだ。」
「やっぱりそれだけじゃダメかしらね。これだけでは戦ってもらえないかしら。博麗の巫女さん?…、そうダメなのね。ちょっと待って、考えるから。本当に戦いたい理由。本当の理由。…私にもはっきりとはわからないけれど、多分…せっかく作ったスペルカードを見てもらいたいんだと思う。私は、この図書館で百年近くにわたって研究を続けてきた。その時間の中で、その情報を蓄えてきた。情報の量はたかだかこの図書館に収まる程度ではあるけれどね。そのすべてをかけて作りだした、発狂しているというわけでもない、ただ整然としているわけでもない、5つの元素の具現。私なりの『世界の答え』を…なんていったらよいのかしら……顕示、そうね。顕示したい。せっかくのスペルを、そこいらの妖精とか、そこいらの門番とか、そこいらの吸血鬼とか、そこいらの妖怪とか、ただの人間とか、そんな存在に使いたくない。世界の構築者である、世界の答えに幻想郷で最も近い一人である博麗の巫女に見てもらえる機会が現れたのよ。味わってもらいたいと思ってはいけないかしら。あの隙間妖怪にっていうのもよさそうなんだけども、折角なら人間のほうがいいじゃない?人間のほうが壊した時に楽しいもの。……さて、小悪魔。今すぐに準備なさい。博麗の巫女がどんなふうに私を楽しませてくれるのか。楽しみで楽しみで、仕方ない。私のこれまでの経験をその身をもって、」
 しかし、その言葉が終わる前に霊夢は戦闘を否定する。
「……、待ちなさい。私は貴女とは戦わない。一切そのつもりはない。貴女が事件に関与していないとするのならば、私が貴女にとって敵でないように、貴女も私にとって敵ではない。」
一呼吸をおいて、霊夢は語り続ける。
「お前はスペルカードルールを理解しているのか。スペルカードルールは人間を殺さないためのものだといっても過言ではない。妖怪を滅ぼさないためのものだといっても過言ではない。貴女がこれからの決闘において私を殺す気でいるのならば、私は全能力を持ってお前を打ち滅ぼす。魔女よ、改めて問う。貴様はスペルカードルールを遵守する気があるのか。」
霊夢は冷たく言い放った。あまりにもらしくない言葉に魔理沙が口を出す。
「…、そんな言い方をするなんて霊夢らしくないぜ。もっと回りくどくも鋭く相手の弱みを突くのかと思ってた。まぁ私としては、せっかく戦うんならレミリアとの戦いが見たいがな。」
 パチュリーはようやっと落ち着いたようで、一度ため息をつき小悪魔にもう一杯の紅茶を要求した。
「……そう。わかったわ。いえ、理解したという方が正確のようね。できれば貴女と戦いたかったのだけれど、今はやめて起きましょう。喋り過ぎて喉の調子が悪いようだし……」
 紅茶を持ってきた小悪魔も、
「パチュリー様があそこまで喋るのを始めてみた気がします。」
 と、驚いている。霊夢は、パチュリーとの談話は終わったと判断したらしく、席を立った。
「さてさて、この魔女がスペルカードルールの意義を勘違いしていたことは問題ね。レミリアとやらが同じ間違いをしていたなら説教してやらないと……。いえ、かなり子供っぽい性格だと聞いているから”遊び”であることは理解しているはず。問題は、一緒に遊ぶということを理解しているかどうか、ね。」
「なるほどな。スペルカードルールはコミュニケーションなわけか。霊夢、実は他の奴と遊びたかっただけなのか?」
「勿論違うわ。。遊びたがっている妖怪の相手をするためよ。」
 少しあきれた魔理沙ではあったが、霊夢の言に最終的には納得したようだ。「さて、それでは…」と霊夢が図書館を出る挨拶をしようというとき、ドアからノックの音がした。

ノックの後、恭しく現れたのは一人のメイド。小柄とはいえないが、まだ20にも届かないような歳ではないだろうか。
「失礼いたします。博麗霊夢様はこちらにいらっしゃいますでしょうか。」 
霊夢はこの少女が誰かは魔理沙の話からわかっていたが、あえて名を問うこととした。
「私が、博麗霊夢よ。そういう貴女はどなたかしら。」
「私、この紅魔館でメイド長を勤めさせていただいております。十六夜咲夜と申します。以後、お見知りおきのほどを。」


幕間⑥
 話が咲夜の登場にまで進んだところで、一同は話を一旦落ち着かせる。
「魔理沙から聞く前から、噂には聞いていたけれどもね。まさか本当に人間がいるとは思わなかったわ。」
 と霊夢もこのときのことは驚きであったようだ。驚きのついでにと、咲夜が来る前はどうしていたのかをレミリアに聞いてみようとしたがすんでのところでとどまった。どうせ従者を連れてきては、飽きるたびに食料にでもしてきたのだろうと、判断したのだった。そこで、別の質問に切り替えることにした。
「今回の従者もなかなかに長いようだけど、どこで拾ってきたのよ。」
しかして返ってきた返事は簡単なもので、
「咲夜が里で拾ってきたのよ。なんでも親を亡くしたとかで途方にくれていたらしいわ。」
 さぁどうだか、といった疑念の表情を浮かべる霊夢を気にかまわず、昔話は進むのであった。


東方紅魔郷SS 更新5

回想④(Stage3)
 霊夢は、チルノに教わった道を頼りに湖のほとりにある洋館へ着いた。いかにも中世の屋敷という出で立ちであり、紅い霧の密度がもっとも濃い。
「この館よね。…さて、いっちょ乗りこんでみますか。」

乗り込んでみるとはいっても、目の前には厳めしい門が鎮座している。詰め所がないのか、中華風の出で立ちをした門番は門の前で暇そうにしていた。どういった態度で扱われるか測りかねた霊夢は、とりあえず正攻法を取ることにした。
「失礼。ここは紅魔館よね。私は、森の向こうにある博麗神社の巫女で博麗霊夢と申します。ぶしつけでなんだけど主に取り次いでもらえないかしら。」
「主は多忙でして、面会はかないません。」
門番は要件すら聞こうとしない。
「それを決めるのは貴女の御主人ではなくて?貴女が決めてよいことのなのかしら。」
 と、一応脅してみたのだが、門番は頑なに否定を繰り返す。霊夢は通すなという指令を受けていると考えるべきだろう。そのような態度を取られて気の短い霊夢が我慢できるはずもなく、雰囲気が瞬時に変わった。
「私は、博麗の巫女。使命は幻想郷の安寧を維持することよ。貴女がそれを邪魔をするというなら排除せざるを得ない。」
 門番もそれに合わせて戦闘態勢をとる。博麗の巫女の強さは方々からも十分に聞いており、メイド長からも「少しでも時間稼げれば十分よ。」と言われていた。しかし、彼女は門番なのだ。
「確かに私は貴女に敵わないでしょう。しかし、私は門番ですから。私の使命は部外者を紅魔館へと入れないことです。」
 譲れない使命がある。全うするためには戦うしかない。

「華符「芳華絢爛」!!!」「光霊「神霊宝珠」」
 
 スペルカードの発動は同時だった。互いに弾幕が襲いかかる。しかし二人の反応は対照的であった。美鈴はその弾幕の速さに驚愕し、霊夢はその弾幕の美しさに見とれる余裕を持っていた。
「見事なものね、門番さん。まだまだスペルは持っているのでしょう。もっと美しいものを見せてもらえるのかしら。」
 霊夢の挑発は止まない。


― 紅魔館の一室にて ―
館の主人は外から聞こえてくる爆発音を気にもせず紅茶をたしなんでいた。そばにはメイド長の咲夜が控えている。
「さて、咲夜。門番はどの程度時間を稼げるかしら。」
「もって10分ほどかと思われます。それよりも短い可能性が高いですが。いかがなさいますか。」
咲夜は一時的にレミリアを地下へと逃そうと考えていた。レミリアの不興を買うことは分かっていたが、それが従者の使命と考えたのだ。レミリアが今回異変を起こした理由にも相違しないはずである。しかし、レミリアはその意を下した。
「咲夜、貴女は何を言っているのかしら。何故私が逃げ出さなくてはならないの。霊夢とやらに私が討たれるはずがあろうか。とは言っても……あの門番を10分で倒すとなるとかなりの実力の持ち主ということになるわね。」
門番の実力がかなり高いものであることは知っている。あの妖怪を手に入れるときにレミリアをもってして微かではあるけれど手傷を負ったのだ。
「ええ、おそらく『人間』では最強かと。お嬢様も、…妹様も十分にお遊びいただけると思いますが。」
「確かに、今回の事を起こしたのはあの子が全力で遊べる相手を探したいということではあるけれども、」
 最終的に、あの白黒の魔法使いはお嬢様が打ち負かしましたが、と咲夜は付け加える。
「今度の敵は、とりあえず紅い霧を解消したかった白黒とは違う。『幻想郷のバランスをとる』使命を持った巫女。うまくやらないと……。」
 一息おいてレミリアは話を続ける。霊夢と彼女との戦闘は、巫女の使命とは関係なしに始めらなければならない。
「私は、あの子のところに行ってくるわ。とても話を聞いてくれるとは思えないけど、大人しくしておくように言わなくてはならないわ。爆発音とかしたら暴れてしまうでしょうし。咲夜、この場は貴方に任せる。」
「はい、お任せ下さい。お嬢様のため、この身をもって巫女を止めて御覧に入れます。」
「貴方で抑えきれないと思ったらすぐに退いて結構よ。貴方は一生私につかえるのだから。」
さも当然のように言う咲夜にレミリアは一言付け加える。そうしなければ、本当にこの従者は死ぬまで戦うだろう。それは本意ではない。

― 紅魔館正面 ―

一方、紅魔館の門では、すでに美鈴は追い詰められていた。準備したスペルはすべて看過され、霊夢には美しい花火だと賞賛される始末だ。
(こんな簡単に門を通していたら咲夜さんにまた叱られてしまう…。というより今度はクビかも…、さてどうしたものか。)
 
「門番!!もうお終いなの?もっとみたかったのに仕方ないわね。十分愛でる事はできたしそろそろ門を通していただける?」
霊夢はニヤニヤとしながら美鈴に話しかける。
「それはできません。私では貴方に届かないでしょうが、それでも門番としての仕事は全うすべきと思っています。」
その間にも美鈴は通常攻撃を放つがことごとく避けられてしまい、掠る様子すらない。それでも美鈴はその姿勢を崩そうとしなかった。その姿勢に霊夢は若干の感動を覚えたのだが、その感情は当然表わさず言葉をつないだ。
「しかし、スペルのストックは残っていないのでしょう?その貴方はどのように反撃するというの?」
 美鈴は言い返すことができない。その言い返しができなかった時点で美鈴は負けを得心した。
「失礼しました…、博麗霊夢様。ようこそ、紅魔館へ。」
「案内はいらないわ。お疲れ様。」
 疲れた様子も全く見られない霊夢は、こうして紅魔館内部へと侵入していった。


幕間⑤
「結局私、あの時は全く見せ場がなかったんですよね。いやはや申し訳なかったです。」
 ははは、と苦笑する門番。若干、歳をとった感じはするがその風貌はほとんど変わっていない。
「幻想郷に移ってからこれまで幾度となくこの紅魔館は外敵にさらされてきましたけれど、門を破られたのはこの紅魔事変中の二回だけ。貴方はよくやっていますよ。」
と絶賛の咲夜。レミリアも、
「ええそうね。美鈴はよくやってくれていると思うわ。欲を言うともう少し強ければ貴方とも遊べるのだけれど。」
 と珍しく(咲夜以外の)他人をからかうほどであった。


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